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東京高等裁判所 昭和55年(ネ)2457号 判決

控訴人 モレンド・イクイップメント・カンパニー・インコーポレーテッド

右代表者 ジェイム・アイ・スタイン・シュレーバー

右訴訟代理人弁護士 外山興三

小中信幸

細谷義徳

被控訴人 石原通商株式会社

右代表者代表取締役 古賀昇之助

被控訴人 石産商事株式会社

右代表者代表清算人 西内昭彦

右両名訴訟代理人弁護士 稲澤宏一

板垣吉郎

右両名訴訟復代理人弁護士 野田房嗣

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

理由

当裁判所も控訴人の本訴請求はいずれも理由がないから棄却すべきものと判断するものであり、その理由は、次に付加、訂正又は削除するほかは、原判決理由説示のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決一五枚目表三行目の「被告石原通商が」の次に「一一月三〇日」を、裏末行の「第三六号証」の次に「(甲第三六号証は原本の存在も争いがない。)」をそれぞれ加える。

2  同一六枚目表六行目の「原告」を「被控訴人石原通商」と改める。

3  同一九枚目表二行目から二二枚目裏五行目までを

「1 控訴人は、本件売買契約においては被控訴人石原通商が昭和四九年一一月三日以前の日付のBLを確保する旨の黙示の特約があり、同被控訴人が右特約を履行しなかつたので債務不履行であると主張している。そして、本件苛性ソーダに関し発行されたBLの第三原本である甲第三八号証によると、BLの発行日付として当初「NOV.15.1974」と記載されていたところ、これが薬品様のもので消され、新たに「NOV.×3.1974」と記載されていること、当初の記載の痕跡が残つているので、BLをよく見れば発行日付の右訂正を確認できること、右訂正が作成権限ある者によつてなされたことを示す署名等はないことが認められ、従つて、BLの発行日付が一一月三日であるものの、右認定の状態のBLでは被控訴人石原通商が一一月三日以前の日付の真正で何らの異常のないBLを確保したと認められないことはいうまでもない。しかし、そもそも本件全証拠によるも、本件売買契約において被控訴人石原通商が一一月三日以前の発行日付のBLを確保する旨の黙示の特約があつたと認めることはできない。既に認定したとおり一〇月二四日本件売買契約が結ばれた際はLC受領後一か月以内に船積するとの約であり、その後LCでは一一月二〇日までに船積すべき旨指示されていただけであつて、≪証拠≫によれば、控訴人の本件苛性ソーダの転売先であるカンポス社がブラジル政府より得ていた苛性ソーダの輸入許可の有効期限は昭和四九年一一月三日までであり、モールは一一月一日被控訴人石原通商に対しテレックスで「BLの発行日付は一一月三日あるいはそれ以前でなければならない。」旨要請したことが認められるが、その後も交渉が継続され、結局、同月一八日本件苛性ソーダをレシフェに送ることが合意され、同月二二日同被控訴人が本件苛性ソーダの出港日を一二月一日と連絡し、モールが右出港日を確認しているので、BLの発行日付を一一月三日以前とするとのモールの要請は、同日を過ぎて交渉を継続したことにより黙示的に撤回されたものと解すべきである(現実の船積日にかかわらず発行日付を一一月三日以前に遡及させたBLを同被控訴人が確保する黙示の特約があつたと解すべき特段の事情を認めることはできず、そのように現実の船積日より一か月近く遡及させた日付でBLを発行することも許されるという商慣習を認めるに足りる証拠もない。)。また、前掲≪証拠≫は本件苛性ソーダに関し被控訴人石原通商が発行した送り状で船積の日付がBLと同様に一一月一五日から一一月三日に訂正されて同被控訴人の訂正印が押捺されているが、右訂正の経緯については証拠上明らかでなく(あるいは、原審証人桑原一晴の供述のとおり当初船積の日は一一月一五日と見込んで記載したがBLが一一月三日になつていたため、それに合わせて訂正したものであろう。)、BLや送り状には前記カンポス社が得たブラジル政府の輸入許可書の番号が記載されているが、このことから右輸入許可書がモールから被控訴人石原通商に交付されていたと推認することはできず、他にこの交付を認めるに足りる証拠はないので、いずれも前記認定を左右するものではない。」

と改める

4  同二二枚目裏六行目の「5」を「2」と改める。

5  同二三枚目表八行目から末行の「余」までを

「控訴人は、被控訴人石原通商がBLの発行日付を改竄した行為が不法行為を構成すると主張しているが、BLの発行日付は改竄されていなければ一一月一五日であつたから、改竄されていなくとも既に認定した事情から本件苛性ソーダはブラジルで通関できなかつたものであり、BLの発行日付の改竄と控訴人主張の損害との因果関係がないので、右改竄の事実及びその他」

と改める。

よつて、以上と趣旨を同じくする原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないので棄却する

(裁判長裁判官 倉田卓次 裁判官 大島崇志 高山晨)

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